『テイキング サイド』in 天王洲銀河劇場(2/2)

夜の回を観てまいりました。以下感想とか(毎度ヘロヘロ申し訳&念のためネタばれ注意)
・独裁者に寵愛された偉大な指揮者、前線で目にした凄惨な光景を今でも忘れられず苦しみながら罪あると考える相手に対して激しく追及する尋問者、音楽に救われ、また影響を与えられた人々のその後は…戦時下において芸術は果たしてどのような役割を果たしたのか。アーノルド少佐を演じた筧利夫さんと、フルトヴェングラー役の平幹二朗さん、お2人が対峙する場面からは一口に正義はどちら側にあるのかとは語りようがないことを感じざるを得なかった。一つの部屋の中で繰り広げられる緊迫した対決模様、途中で挿入された音楽ととある映像群も併せて観た者の心奥に何がしかの重さを置き示していくような物語だったと思う。
・その中で、お目当てだった福田沙紀さんはアーノルド少佐の助手・記録係を務めるエンミという女性を演じてました。彼女の父親は独裁者に反する計画により命を落とした人物であり、そのことから英雄の娘として扱われることに自身は違和感を覚えている、また上司の尋問相手であるフルトヴェングラーに対しても崇拝の気持ちを抱いており、基本真面目に職務を果たす姿勢を見せつつ、自らの意見や疑念も表明し、アーノルドへも度々指揮者に対して敬意を払うよう求めるなどの芯の強さや父に関することで抱えていた感情を爆発させるような場面もある、という人物を等身大で十二分以上に表現していて、やはりふくさきさんの演技すごいよと。あとふくさきさんは落ち着いた声や笑顔も素敵なんすけど相対する存在に向ける視線の強さというのも大きな魅力の一つだよなということも改めて感じました。
鈴木亮平さん、ユダヤ人として生まれ一人米国に送り出されて両親は失ってしまった人物で、若い将校としてアーノルドの部下として着任するも、10歳の頃に父に連れられていった演奏会でフルトヴェングラーの指揮に触れ音楽に目覚めた経験から、偉大な指揮者を敬愛しておりその人を擁護しかばう姿勢をみせる。この方もアーノルドに対する反抗する心情を表すシーンでの目付きや指揮者に自らの味わった感動を直接伝える場面での純粋さなどが印象的でした。
・極限の状況下における芸術の果たす役割、その意味、生きるに当たっての精神的なものが与える力、立場を異にする者の相対する光景とその周囲において務めをこなしつつ思うところを伝えようとする者達、観応えあり胸に重くおちるものがある作品でした。あ、でも筧さんのセリフのギャグッぽいとことか(しかも結構な下ネタ)ふくさきさんの上司の過激発言(中にはセクハラとしか思えない言動)に対する逆襲とか主にレコードかける時とかに見られる音楽を愛してるんだなということが伺えるようなニコッとした笑顔とか鈴木さん演じるデイビット中尉のアーノルドのムチャに対する困惑の表情とかいった部分での見所もあって、ひたすら重さに打ちのめされるという舞台では決してないんで、そこら辺も含めておすすめです。