大人の麦茶第二十一杯目公演『ゆびに のこる かおり』in 紀伊國屋ホール(12/8)

12/7の昼公演を観て、観終えて「これはもう一度物語世界を味わいたい、そうしないと絶対後悔する」と思って翌日の予定を繰り上げて千秋楽のチケットを買ってしまった。それくらい、とても心揺らされる作品でした。
・過ぎていった日々、出会った時とそれからの時間、取り戻せない過去ややり直せない出来事、これからを進む勇気と前へ生きる力、様々な言葉が連想される中、一番強く脳裏に浮かんだのは“もしも”という単語。
大人の麦茶さんは、もしも、という物語を作る上で相当に扱いが難しいと思われるキーワードを、こちらの想像もつかない手法で用いていて、いつもその鮮やかさ見事さに唸らされる。何よりすごいと思うのは、登場する人物一人ひとりが時の流れを刻むためのコマではなく物語世界を確かに生きる存在として描かれていること。
・やーまあ自分は主にハロー関係からオトムギさんの舞台観始めたのでそんなどーこー言えないんですけども、これまで観させていただいた作品から味わった気持ち、今回も強く感じました。特に切なかったのが、親友への感情が強すぎてその恋路を一度は絶ってしまった女性が、かつてとても大切だった男の子と大人になった今再会したのだけれど、彼は既に(ちょっとした誤解から)親友の方に心を向けてしまっていた、というエピソード。またそこに至るまでに観客をもミスリードさせる手法も、そして彼が自分の気持ちに気づかされる、とある若い2人によるやり取りも、何とも上手くて唸らされる。若くて、奔放で、しかしとっても真っ直ぐな女の子が放った言葉、多分それがなくとも想いは既にすれ違っていてしまったかもしれないけれども、再会してまだ間もない時点で彼の心の内に答えをもたらしたのは確実にその言葉だったのだろうというのがまた、クるものがあるんすよね。。
とまあ全然まとまんないですが、とにかく心に響きまくりな物語、魅力的な登場人物達が生きる世界を存分に味わわせて頂きました。どの演者さんもそれぞれキラキラされてましたが、特に並木秀介さん(1974の父やタイガーブリージングでのアウトロー男性を想起しました)、和泉宗兵さん(スイッチ入った時のゴリゴリモードと過ぎた時間を語る時の遠い眼差し)、武田優子さん(さっぱりハッキリキップの良さ、想う人への切実さ、溢れる優しさ)、桑原みずきさん(時には(しばしば?)シツレイ発言あるけどニクめない、物事をまっすぐ見る強さ、容赦ないけど確実に相手をきちんと見ているがための発言の数々)、といった方々の舞台上での姿、印象的でした。観ることが出来てよかった。忘れ得ぬ時間をありがとうございました。