ラジオドラマ

モーニング娘。仔犬ダンの物語 第一話 名前の無い犬
我輩は猫である。名前はまだ無い。昔、そう言った猫がいたらしい。そいつは、誰にも愛されていなかったのかも知れない。人間は、愛する者に名前をつける。愛する者の名前を呼ぶ。人間は、言葉を受け取ることでしか、愛を感じることが出来ないらしい。はっきり言って、不幸だ。僕ら犬は、言葉でなく、別の形で愛を感じるから。

女の子「ダン」
ダン(あ、)
女の子「ダン、ほらおいで。ご飯だよ」
ダン(弥生ちゃん!)
弥生「寒いねえー、ダン。明日のイブは雪になりそうだって。ホワイトクリスマスだよー?」
ダン(ホワイトクリスマス?)
弥生「ホワイトって言ってもわかんないよねぇ・・。ダン、目が見えないもんね」
ダン(それを言うなよぉ、何かさぁ・・)
弥生「てゆうかあたし、犬に話かけて、バカっぽくない?なんかさあ、いかにも友達いませんみたいなさぁ」
ダン「ワン!ワンワン!」
弥生「ねえ、ダン。フフッ」

そう言って弥生ちゃんは僕の頭をクシャクシャッとなでた。僕は弥生ちゃんの小さな手の感触を突然頭に感じて、ちょっとびっくりしたけど、その暖かさを感じて、少し安心した。僕ら犬は、暖かさで愛を感じるから。僕の名前は

弥生「ダン」

目の見えない、仔犬だ。

僕は、団地と言うところで暮らしている。団地と言うのがどんなところなのか、目の見えない僕にはわからないけれど、決して居心地の悪いところじゃない。僕を助けてくれた真生ちゃんは遠くに行ってしまったけど、友達の千香ちゃんが僕の面倒を見てくれる。僕は決して不幸なんかじゃない。
弥生「クシュッ。はーっ、ダン、寒くなってきたねー。なんか、なんかさあ、クリスマスって感じだねえ。空ほら、真っ暗だしさぁ、雪だといいねぇ」
ダン(彼女の名前は古澤弥生。団地のえらい人の娘だ)
弥生「あ、ごめん、ダンの頭にくしゃみかかっちゃったね。あっはは。ま、勘弁してよ。ほら、コンビニからさ、賞味期限切れの牛乳、持ってきてあげたから」
ダン(こんな具合にサバサバしているのはいいけど、それは良く言えばの話であって、悪く言えば、彼女はガサツだ。まあでも、彼女がいなかったら僕はこの団地に住まわせて貰えなかったわけだし、そういう意味では、感謝してる。
弥生「ん?ん、あ、ごめん。ダン、この牛乳、腐ってっかも。新しいのと替えるわ、悪い悪い」
ダン(感謝はしてるけど・・、すっごく不安だ)

弥生「ほーらダン、新しいのだよ。(牛乳注ぐ)あ、これ低脂肪乳。犬は低脂肪牛乳、飲めたっけな。ま、いっか、ダン、これ飲んでお前もダイエットしなさい。ねー!体脂肪率、落ちちゃうゾ!」
ダン(とゆーかこの子は、僕以外に友達いないんだろうか。目の見えない仔犬と、低脂肪乳について語り合っている女の子はかなりあやしいと思う。僕が言うのも何だけど)
弥生「ほーらダン、ほら飲んで」
ダン「ワン、ワンワン、ワン!」
ダン(とか言いつつ、まあ僕も犬なんで、牛乳あったら喜んで飲んじゃうんだけど)
弥生「ほーらおいしいねぇ、ダン。幸せだねぇ、よしよしよし」

我ながらちっぽけな幸せだ。牛乳ってやつについて僕が知ってるのは、色が白い飲み物だってことだけ。というよりもむしろ、僕の目が見えなくなる前に覚えている色ってやつは、牛乳の白だけ。目が見えなくなって、暗闇の世界に慣れるうちに、その白さえも、思い出すのが難しくなっている。だから、僕は牛乳を飲むたびに確かめるんだ。これが白だ。この味が白だって。

−携帯の着信音−

弥生「おおっ」
ダン「ワン、ワン!」
弥生「ビックリしたねえ、ダン。これ?あたしの携帯。だから、怖がらなくても大丈夫よ。(通話ボタン押して)もしもしー?ミキ?どした?久々じゃーん、え?こっち帰ってくんのー?え、もう駅。ぃやーだよ、もう早く言いなさいよもう。え、迎え?何であたしがーぁ」
ダン(見なくてもわかる。弥生ちゃんは今・・)
弥生「え、たった一人の友達いなくてさみしかっただろうって?どーっこがもぉ」
ダン(笑っている)
弥生「しょーがない、今すぐ行くから。駅前ね?東京の土産話、たくさん聞かせてよ。じゃあ後でね。はい」
ダン(弥生ちゃんは笑っている)
弥生「ダン、ちょっとあたし、出かけるわ。草壁美貴っていう子なんだけどさ、つれて帰るから。すーごいバカでうるさくて、あたしを置いて東京に出てっちゃうようなヤツなんだけど」
ダン(それは)
弥生「あたしの、親友だから」
ダン(親友?)
弥生「じゃあ、ダン。楽しみに待っててね」

−弥生、急いで去ってゆく。やがて雨が降り始める−

僕の牛乳の中に、雨がぽつぽつと落ちて、あっという間に僕の牛乳は、お皿からあふれ出した。僕は、雨で薄まってとても飲めなくなった牛乳を、それでも必死に舌ですすった。だってそれは、僕がたった一つ、この世で覚えている色だから。この世でたった一つ、覚えている人間の顔を、思い出す味だから・・

女の子「ごめんね・・。」
ダン(香澄ちゃん?)
香澄「ほんとにごめんね、ほんとに・・。ほんとにごめんね」
ダン(香澄ちゃん、いるの?そこにいるの?ねえ、香澄ちゃん!)
ダン「ワン、ワン!ワンワン、ワン!」
香澄「ごめんね、ワンちゃん、ごめんね・・。」
ダン(香澄ちゃん、香澄ちゃんいるの?!いたら、僕の頭をなでて!僕を抱きしめて!見えないんだ、香澄ちゃん・・!)
香澄「ごめんねワンちゃん、ごめんね・・!」
ダン(香澄ちゃん!!)

降り続く雨に、僕の牛乳が溶けて消えていくかのように、あの子の声も、雨音の中に溶けて、消えて行った。もう二度と思い出したくないのに。思い出の引き出しを開けるたび、彼女のことが、一番上に入っている。彼女は、僕に名前も付けずに捨てた。

ダン「ワン、ワン!キューンキューン・・」

我輩は犬である。名前はまだ無い。昔、そう言った犬がいたらしい。そいつは、誰にも愛されていなかったのかも知れない。

とゆーわけで、ラジオドラマ版・仔犬ダンの物語の第一話のみ書き起こしてみました。やー、すごいね、いつもラジオ番組おこしてる人。
えらい時間かかるし(打つの遅いからだけど)

どっかに既にテキストありそうですよね。ANNSリスナーの中で、矢口さんか安倍さんのファンの方のサイトとかに置いてありそう。それか掲示板とか。

音声を文章に置き換えようとすると、迷うとこ沢山出てきて困った。効果音とか、ダンの独白と心の声と実際の鳴き声とか。

シナリオ公開してほしいなあ。つーかいっそ、こちらも小説か漫画で売り出してよー!

第二話以降は体力があったらまた。というか、もうクリスマス過ぎてるしね。
今日はたまたまここ2日のテレビを見てないから関係ないことしてみようとか
思いまして。

あと、読む際は ダン、草壁美貴=矢口真里 古澤弥生=安倍なつみ 桜井香澄=高橋愛の声にそれぞれあてはめてください。ちなみになっちの役とダン以外の人名は適当に当てはめた字なんで正確でないです。申し訳!