ドールハウス in 赤坂RED THEATER(8/4)

観てきました。以下感想的なあれこれ(毎度ヘロヘロ申し訳&ネタばれ念のため注意)
・仕事終えた足で地下鉄乗って降り立った赤坂、TBS近辺はまだブリッツとか馴染みあるんだけど進むごとに外国の人増えてきて黒塗り車もちょくちょく見かけたりと別世界的な空気に腰が引ける中会場に到着。以前も一度三好さんの舞台で来たことある筈だけどあの時は確か間に合わないかもでタクシー利用してたししかも昼間だったからこんなオトナな街としての雰囲気は味わってなかったのでどうにもビビってしまいまして。
・そんなんなりつつも開場時間になったので階段下りて地下の受付へ。今回はネットでの指定席引換券購入したのでチケットに代えてもらって場内へ。席に向かったら端の方ながらも前から2列目とかなりの好位置でビックリ。
・場内アナウンスがやけに英単語混ぜた独特な話し方してくるなー思ってたら開演したらああーなるほどとナットク。
・今回は何となく関係者的な方々多めな印象受けたり。ちょうど自分の座った席の両隣も片方はゆったりした物腰の紳士、反対側は出演者の友人的な自らも演劇されてそうな女性だったりしまして、そこはかとなく緊張しながら開演を待ちました(といっても寝不足だったんで開演数分前は睡眠とったりしてたんですが←緊張してないじゃんか)。
・しかしひとたび開演すると一気に物語世界に引き込まれた。取り上げられているテーマが、多重人格という、そのことを語るには相当に心を砕いて作られる必要があると感じられるもので、それがもう真摯に隅々まで緻密に構築された脚本・演出で物語世界が描かれていてひたすら圧倒された。
・登場する人物も、もちろん内部人格も含めて一人ひとりに個性があり感情を抱いて生きている存在だということが伝わってくる。幾つものエピソードの重なりを経て、綱渡りのように少しずつ快癒に向かっていく過程、途中で昔馴染みの人物とのやり取りが元で危うい状況が起こるも、主人公の中に生きる人格達が彼女を守る。そして描かれる、彼女の名前を感じさせるエンディング。
・こちらの舞台を観たいと思ったきっかけは三好絵梨香さんと、そして今回主人公を務めていた村上東奈さんが出演していたからでした。村上さんは、ハロー関係の舞台で出演されてる姿を観るうちにその存在感やイキイキしていたりキリっとしていたりする表情、トーク等でのオチャメさとかがいい感じな方だなと思うようになっていて、今回主演を務めるということでかなりの期待して観に行ったところ予想以上の熱演でうぉーっとなりました。感情の起伏が激しく、幾つものまったく異なる人格を演じ分けるという難しい役柄をごく自然に、もちろん情感を込めて演じていた村上さんは本当にすごかった。
・三好さんは登場する人格の中の一人、明るく少しクセはあるけれど、主人公の辛い部分を引き受け、主人公のことを守るという姿勢は根本では他の人格達と変わらない。み〜よさんの持ち味が生きてる、魅力的な役柄と思いました。
・こちらの作品がすごいなと感じさせられたのは、どうしてもズンとくる題材に真っ直ぐ向き合い、誤解を含まないよう細やかな神経を用いて世界を作り上げるその姿勢、そしてシリアス一辺倒に走らず明るかったり少々ヒネったりクスリとさせられるシーンも入れ込まれていて、その組み込み方がまた絶妙。登場人物たちから語られる言葉や表情でそれぞれの人格が生まれた背景や彼・彼女達の個性を鮮やかに描き上げる手腕、まったくもって見事だと思いました。
・幼い頃の主人公とよく遊んでいた近所の女性の存在がまたキーポイントなんだろうなと思う。誤っているとまでは言い切れないものの、一歩過てば、例え善意が元の言葉や行動であっても治療してきた行程がかくも崩されかねないという危うい側面が描かれていて、でもその一方で、昔の主人公は彼女の存在に確実に救われていたであろうこともきちんと語られていて。
・そう、北嶋マミさんという方が演じられていた、あの有坂という医師がこの物語のもう一人のメインキャストなんだろうなとも。自らの弱さや至らない面も実感し、時に涙し、患者になぐさめられたりすることもあるけれど、治療する対象を真っ直ぐに、誠意と温かさを持って言葉を聞き相手に接するその存在の大きさもとても印象的でした。
・物語終盤に、主人公自身が抱えていた辛い記憶を医師に話す場面、そしてそれぞれの人格が抱える辛い記憶や痛みを受け入れられるだけの強さを持ちえたと判断した彼・彼女達が相談し、統合に賛同するシーン、沁みました。
・それにしてもホント、オモシロ場面とかでも細かいとこ突いてきて上手いっすよねー。季節の移ろいを表す場面でのナースコンビのアガサとクリスティのコントみたいな会話とか、サブ担当?な滝川医師の家庭模様とか、カメラマン上条の心和むお人良し&なまりっぷりとか、イケメン(風な雰囲気)の馬渕医師と人格の一人であるユウキの対話とか。しかも滝川医師もきめるとこでバシッと心にクるコトバ言ってくれるし、馬渕医師対ユウキのやり取りではニヤリとさせられつつウルッともこさせられたりもするし(でもシメではわーやられた!とも)。
・あとあの曰く有りげな患者?(天使?)な宝木という女性の言動も唸らされますわ〜。
という具合で、とにかく題材に対する向き合い方、作品世界の構築・描き方の見事さ、登場人物の存在感、物語のバランスやテンポと、様々な面から見てももう本当に観てよかった!と思う舞台でした。心に残る時間をありがとうございました。